2007年04月20日

代理出産認可の前にまずドナーによる卵提供を認可すべきだ

卵子提供:容認派が4分の1超える 初の意識調査−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ
 不妊の女性が他の女性から卵子の提供を受けて妊娠・出産を目指す治療について、厚生労働省の研究班(主任研究者=吉村泰典・慶応大教授)が実施した国内初の意識調査の結果がまとまった。国内で卵子提供が認められるようになった場合、「自分の卵子を提供してもよい」「どちらかといえば提供してもよい」と答えた女性が4分の1を超えた。また卵子提供にあたり、金銭など何らかの報酬を求めた女性が全体の46.5%だった。


関連記事:
卵子提供:「前向き」25% 希望報酬、平均は40万円−−厚労省初調査−話題:MSN毎日インタラクティブ
解説:卵子提供・厚労省初調査 報酬など国に宿題−医療:MSN毎日インタラクティブ

具体的には、卵子提供による不妊治療の国内での実施については、52.6%が肯定的な答え。もし制度ができた場合、自分の卵子を提供することに肯定的な答えが25.8%であったという。
調査対象は、20〜34歳の女性517名で、インターネットを通じた調査の結果だということである。

こちらは、記事によると、代理出産よりもかなり前から、4年前にはすでに容認の報告書が厚労省の部会から出ているそうだ。しかし、なかなか制度化に至らない、という状況であるらしい。
記事によれば、焦点としては、出生した子が遺伝上の母(卵提供者)を知る権利をどのように保持するか、という問題と、卵提供者への報酬をどうするか、ということのようだ。
前者に関しては、既に行われているAIDと同様に考えられていくことになるのだろう。
後者はいささか微妙な線がある。提供者はそれなりに身体的苦痛や拘束(採卵のためにホルモン剤を一定期間服用するなど)を要求される。採卵に伴うリスクも、腹腔内に針を刺すという手技を行う以上、ゼロではない。
だからといって有償とすべき、と言えるかというと、そうとも言えない。骨髄移植ドナーは骨髄採取時にもっと大きなリスクを負うが、原則無償(入院費用などの負担はないはずだが)で行われている。
このあたりの落としどころが微妙で、なかなか制度化されないという事情なのだろうか。とりあえず、今回初めて意識調査が行われたことから、これから動き出すのかもしれない。

個人的には、卵提供については容認の考えである。自分が卵を提供してもよいとすら思うが、残念ながらもう30代後半となり、年齢的に不適切であろう。
なぜか代理出産については喧々囂々取り沙汰されているが、それに比べればはるかに実施しやすく、遺伝的な問題についても既に行われているAIDと同等の問題しかないはずの卵提供についてここまで黙殺されているのは、なぜなのだろうか。
こちらの制度化を進めることによって自分の子を"産む"ことができる不妊者の数も多いはずだ。卵巣腫瘍で摘出、ホルモン治療の奏功しない無排卵、その他自分での排卵が不可能な人は、一定数存在する。代理出産と比較して、需要が極めて少ないとは思えないのだが。

そして、こういう方法について、代理出産容認を声高に主張する人々はどう思うのだろう。自分のDNAをひかない子どもなど要らないから養子でももらっておけ、とでも言うか。養子を検討せず、いまだ制度的には「抜け穴」にすぎない代理出産を妄執的に主張する人は、そういう価値観、遺伝的に繋がっていてなんぼ、なのだろうか。
本当にさまざまな不妊について対策すべきだと思うならば、そして出産と遺伝を別物と分けて、どちらか片方でも満たせば実の子とする価値観を広めようと思うならば、こういう視点も当然支持すべきではないのか。
根津院長は「緊急避難的に代理出産が必要な人がいる」と言った。それは卵提供による体外受精についても同じことではないのか。4年前に認められていれば妊娠して自分の手に新生児を抱き、乳をやり育てることができたのに、今ではもう歳を重ねすぎてできなくなってしまった人もいるのではないのか。

不妊治療の問題についてきちんと考えるならば、問題が鬱積している代理出産を認めるかどうか以前に、こちらをきちんと検討して実施にもっていくべきではないだろうか。代理出産という言葉のインパクトや、ある芸能人の過剰なまでのプロパガンダによって、代理出産だけに感傷的な注目が集まってしまい、私たちはそこに惑わされすぎているきらいがある。
乗り越えられるかどうかは、垣根の高さの問題だけではない。乗り越える意志があるかどうか、まずそこからだ。

ラベル:不妊治療
posted by あずみ at 12:36| Comment(5) | TrackBack(0) | ニュース等 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お邪魔します。
 かつては「卵子提供者=出産者=母
親」でしたが、その関係が必ずしも成り立
たなくなってきました。

卵提供の場合  出産者が母親
代理出産の場合 卵子提供者が母親

 当事者同士で「合意」できればそれで良
いのですが、合意できなかった(決裂し
た)場合にはどうなるのでしょう。「法的な
結論=問題の終結」とは限りません。か
つてNHKで行方不明の子供達に関するア
メリカの番組を見た事があります。アメリカ
でも夫婦が離婚した場合親権は母親に与
えられる場合が多いそうなので、「父親が
連れ去って姿をくらます」という例が多いと
言っていました(犯罪がらみも多いそうで
すが)。ですから「子供の取り合いで負け
た側が子供を連れ去って姿をくらますとい
う強硬手段に出る」可能性があります。逆
に「障害のある子供を押し付けあう」場合
には「子供を引き取らされた側が育児放
棄する」可能性があります。
 それから代理出産を推進する側にとって
は「卵提供」は"不都合"なのではないで
しょうか。「出産者こそが母親」という流れ
を強める可能性があるので。
Posted by ブロガー(志望) at 2007年04月20日 22:57
>ブロガー(志望)さん
コメントありがとうございます。
卵提供にしろ代理出産にしろ、従来の"常識"とは異なる概念を持ち込む話なので、当然さまざまな齟齬があります。ただ、卵提供が代理出産と決定的に異なるのは、AIDという"先駆者"があることです。AID自体に全く問題がないわけではありませんが、国内で長期に渡って実施されてきているという事実はあります。これを参考にしてより問題の少ない制度を作ることが、現状でできる、後のトラブルを減らす方法だと思います。具体的には、卵提供者は遺伝的な関係はあったとしても法的には親ではあり得ない、親にはなり得ない、という制度にするべきですし、制度化されるならそのようになるでしょう。卵の場合、精子提供と異なり、必ず「出産する母」が卵提供者(遺伝的母)と別に存在するわけですから、このように決めても子の利益(養育環境が整うかどうかという意味で)は損なわれません。
また、代理母の場合は、産んだ母、つまり最初に子を保持している者が遺伝的・法的な母ではないため、子を譲り渡さないという問題が生じ得ますが、卵提供の場合はこの問題は生じません。卵提供者からすると提供したのは「子」ではなくてあくまで受精卵になる前の「卵」つまり一個の細胞にすぎないものですが、代理出産の場合は、提供するものは「妊娠と出産と子」なのです。この違いは計り知れない差異です。

>> それから代理出産を推進する側にとって
>>は「卵提供」は"不都合"なのではないで
>>しょうか。「出産者こそが母親」という流れ
>>を強める可能性があるので。
こちらに関しては同感です。しかし、その「不都合」さは感傷的かつ利己的なものです。自分の子さえもてるなら、同じように、しかし違う理由で不妊に苦しむ人々は苦しみ続けても構わない、という論理だからです。だからこそ、本文中で代理出産推進者に対して辛辣なことを書いているのです。
もちろん、実際にそのように考える代理出産推進者がいるかどうかはまた別の話で、あくまで「もしそう考える人がいたら」という仮定でしかありませんが。
Posted by あずみ at 2007年04月21日 00:17
お久しぶりです。

>代理出産容認を声高に主張する人々はどう思うのだろう。自分のDNAをひかない子どもなど要らないから養子でももらっておけ、とでも言うか。

これを読んで「はて?」と思いました。
妻以外の第三者の女性から卵子提供を受けるのも、代理出産の1つです。どの文献でも出ていますし、当然ながら、代理出産エージェンシーのサイトを見れば出ています。

実際にも結構多いです。日本で問題となった代理出産訴訟の大阪事例も、第三者の卵子提供の事案でした。代理出産を推進する会は、この事案の当事者を呼んでお話をうかがってますし、いくらなんでもこの方法はダメといって、後ろからドツくまねをする代理出産肯定者は、まず誰もいないですね。もしいたら是非教えて下さい。

むしろ、「代理出産否定者」=「第三者の卵子提供否定」が一番多いかと思います。あずみさんのように代理出産を否定しておいて、第三者の卵子提供を肯定するのは珍しいですね。
Posted by 春霞 at 2007年04月23日 00:40
>春霞さん
コメントありがとうございます。
卵提供による代理出産もあることは知識として知っていますが、現在日本国内でマスコミや諏訪クリニックの根津院長中心に行われている代理出産論議は、わざとなのかどうか分かりませんが、その点を表立って扱っていませんし、むしろ「自分の血をひく子をもつことは当然の願いだ」との印象操作を行っています。少なくとも、それらの報道を見た人々は、そのように印象を受けています。これは事実でありましょう。

もうひとつは、私自身もそうですが、向井亜紀氏とその周囲のアジテーションに印象を冒されているのはあります。代理出産希望者はあんなにも利己的なのか、という印象です。よくも悪くも印象が強いため、彼女に対して同情的になり代理出産肯定のほうへ傾く人々が多い一方、強い反発を感じる人もまた多数生まれるという事態になっています。
代理出産推進者は自分が代理出産を希望する当事者ばかりではありません。当事者がまずは自分のことしか考えられないのは当然だと思います。それに対し、本来冷静に考えられる周囲の人間がただ情でひきずられるのは、率直に言って問題だと思います。

>>むしろ、「代理出産否定者」=「第三者の卵子提供否定」が一番多いかと思います。あずみさんのように代理出産を否定しておいて、第三者の卵子提供を肯定するのは珍しいですね。
両方否定者が多いのは生殖に対する保守的な考えに基づくものなので、そうだろうとは思います。本文にもあるように、卵提供についての賛成者も所詮、たった半数なんですよね。
代理出産になぜ反対かという件は既に過去に記事にしていますが、体外受精などの生殖医療を利用することに反対なのではなく、現状までの議論では代理母(胎を貸す側)の高いリスクとそれに対する保護・保障が軽視されているから、反対なのです。そういう考えだと、卵提供をするしないに関わらず代理出産には反対すれども、単なる卵提供に反対する理由はありません。珍しいかどうかはよく分かりませんが、破綻はないと思います。

まあ、これは、私自身が個人的には単なる遺伝的繋がりは重視せず(子の利益のために積極的に認定する必要がある場合は別ですが)、現実の生活上で親子として過ごすかどうかを重視する価値観をもっているので、そういう考えになる、ということもあります。こればかりは根本的な価値観の違いなので、すり合わせようもありません。
Posted by あずみ at 2007年04月23日 08:49
春霞さん宛のコメントを書いて気がついたのですが、私は卵提供を是非容認せよ、と思っているわけではないようです。自分のことをようです、と言うのもなんですが。
代理出産を容認するなら、卵提供だって同じことでしょ?と思った程度のことでした。
本文中には代理出産推進者のことが書いてありますが、これも、当事者やその周囲で運動している方たちではなく、ただ単にワイドショーを見て漠然と「向井さんかわいそう」とか「今まで知らなかったけど、自分で子ども産めない人はかわいそうね、ぜひ代理出産すべきよね」などと感じて、アンケートなどには深く考えることもなく「賛成。子どもがほしい人は子どもをもてるようになればいい」などとあまり考えず返答する人を想定していました。実際、そういう軽い返答は、ネット上でもいくつか見かけました(掲示板やラジオ番組のアンケート結果などで)。
変な言い方ですが、世の中、そんなに不妊治療について細かい知識があったりいろいろ勉強したりしている人はいないと思うんですよね。当事者以外には。
Posted by あずみ at 2007年04月23日 11:46
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